4 術後の管理
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 上肢高血圧や上下肢の血圧差は,再縮窄の最も確実な所見である.

 安静時に上下肢の血圧差を認めない場合でも,運動負荷により著明な血圧上昇や血圧差の出現を認める場合があり,可能な年齢では,トレッドミルやエルゴメータなどの運動負荷検査を行うことを検討すべきである.しかし,運動時高血圧は必ずしも再縮窄の存在を示唆する所見ではない252)

 胸部X線での大動脈弓部陰影の拡大は,動脈瘤形成の重要な所見である.心電図では,左室圧上昇に伴う左室肥大所見やST・Tの変化に注意する.心エコーでは,大動脈弁や弁下狭窄,僧帽弁病変など心内病変の有無,左室機能や壁厚の評価,上行大動脈,大動脈弓部,胸部下行大動脈など,可能な限り大動脈各部位の血管径,大動脈弓部による大動脈血流速度,下行大動脈における血流パターンなどの評価が奨められる(レベルB)555)-558).上行大動脈や大動脈弓の低形成は再縮窄の危険因子との報告もあり559)-561),このような例ではより慎重な経過観察が必要である.術前後に関わらず大動脈縮窄では脳動脈瘤の合併頻度が高く561),562),若年発症(平均年令25歳)のくも膜下出血の原因になり得ることが報告されており562)-565),注意が必要である.

 MRI またはマルチスライスCT(MSCT)は,再縮窄や動脈瘤の合併が疑われる場合の形態評価に有用とされる557),566)-568).放射線被ばくの点からはMRI が有利であり,術後例では臨床症状や所見の有無に関わらず,可能な限りMRI によるスクリーニングを行うことが推奨されている383),569)
Ⅱ 各論 > 6 大動脈縮窄・大動脈弓離断 > 4 術後の管理
 
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)