3 術後遠隔期における問題と診断
①術後の問題点 1)右室流出路狭窄 右室流出路の再建方法によって不整脈の発生頻度773) やその他の合併症の起こりやすさに差が認められる794) ことについては,大規模なスタディによってほぼ確認されている.Tranannular patch法により生存率は改善したが,遠隔期の合併症については問題があるとの報告がある795) .また,新生児乳児期に心内修復術を行うことにより,遠隔期の再介入のリスクが変わるとの意見がある796),797) .2)肺動脈狭窄 右室流出路再建を伴う心内修復術遠隔期においては,右室流出路狭窄のみではなく,肺動脈狭窄も同じように再手術の適応となる.もともと存在していた肺動脈狭窄が悪化したり,手術手技によって末梢側の肺動脈狭窄が発生したり,心内修復術時に不十分な処置であったものまで,様々な成因の肺動脈狭窄がある.肺動脈狭窄のみであれば,通常50~ 60mmHg以上の圧較差で何らかの処置を検討する(クラスⅡ a,レベルC).ただしこれらの評価は適切な方法で,かつ多面的に行われなければならない.右心不全の診断が適切に行われ,可逆性のあるうちに治療を開始することを検討すべきである(クラスⅡ a,レベルC)798),799) .しかし,どのような右心機能の評価方法が最も適切であるかということには議論があり,さらに先天性心疾患ではその形態ゆえに複雑になってくる75) .②診断 1)エコー 心エコーを用いて右心機能を定量的に評価しようとする試みは数多く行われているが800) ,スタンダードとなり得る定量的な指標は見出されていない.右室容積を推 定する試みもなされている801).流出路狭窄の形態評価や圧較差推定のほか,三尖弁逆流の血流速度から右室収縮期圧を推測するのに有用である.2)CT 近年の高速化したマルチスライスCT(MSCT)の発達によって詳細な肺動脈の形態が短時間で把握できるようになり,術前の計画を立てるのには有用な診断ツール となっている802),803) .撮影時間が高速化されているので,低年齢の小児を含めてきれいな画像が得られる.3)MRI 右心機能評価の重要な方法となりつつあるMRI による右心の機能評価は,今後さらに有用になる可能性がある804) .またMcCannらはMRI で特発性肺動脈性肺高血圧の右室機能評価を行い805) ,delayed enhancementが右室心筋の収縮障害の指標になり得ると述べており,機能面のみならず組織学的変化を捉え得る可能性がある.4)肺血流シンチ 肺動脈分枝狭窄による肺血流の不均等の診断に推奨される.5)肺動脈造影,心臓カテーテル検査 最終的に侵襲的治療の適応を決定するために必要である.同時にカテーテルによる拡張術が行われることもある.左右肺動脈の狭窄に対して,近年MDCTの診断 能力が非常に高くなっているとはいえ,今なお有用な検査である.
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン (2012年改訂版) Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)