2 右室流出路の再建方法
①導管を用いない再建方法

1)経右房,経肺動脈的修復
 これは肺動脈弁輪径が一定基準以上あれば,右心室も肺動脈弁輪も切開せずに右心房切開と肺動脈切開から右室流出路を拡大する術式で,適応症例に適切な手術を行えば再手術の頻度が低いためQOLの面からも好ましい術式である.川島らなどの報告では662),773),774),20年を経て世界中で追試され良好な結果を示しているので775)-778),可能であれば施行すべき術式である.

2)Transannular patch
 弁輪を切開し流出路を広げる方法である.我が国では一弁付のtransannular patch 26)を用いることが多いが,transannular patchを用いること,つまり弁輪を切開することは近接期の生存には影響を与えないが779),長期のリスク(不整脈,再手術)を増大することは1980年代より報告されており780),781),術後の経過観察を行う際に注意を要する.

3)肺動脈閉鎖または右室と肺動脈が連続性を持たない疾患に対して導管を用いずに行う手術(REV など)
 導管による右室流出路再建によって,術後高率に再手術が必要になるという遠隔期の問題を改善すべく考案された方法で,導管がないという点では再手術を減少させる可能性があるため検討に値する782)-785).しかし適応を拡大しすぎると,無理な引きつれからかえって再手術が必要になる症例が増える可能性もある.

② 導管を用いる手術(Rastelli型手術:適応疾患は肺動脈閉鎖を伴う疾患)

 1969年に肺動脈狭窄を伴う大血管転位に対して考案された術式である786).導管を用いるため再手術頻度は極めて高いが,その頻度は使用する導管の種類,耐久性に依存する.欧米では同種動脈を用いることが多いものの,我が国ではその供給が極めて少ないため,弁付グラフト,心膜ロール,異種心膜ロール674),787),ePTFEの弁をつけた人工血管,脱細胞化した異種大動脈,異種肺動脈788),789),牛の弁付頸静脈42),789)-793)などが用いられることが多い.詳細は,「各論9 心外導管を用いた手術」の項を参照のこと.

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Ⅱ 各論 > 12 肺動脈狭窄・右室流出路狭窄 > 2 右室流出路の再建方法
 
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)