2 心房中隔欠損
心房中隔欠損に対しては,外科治療として直接縫合閉鎖,パッチ閉鎖が行われる.適応は限定されるが,最近ではAmplatzer Septal Occluderを用いた経カテーテル閉鎖術も行われる. 2008年の胸部外科学会による集計では,人工心肺を用いた閉鎖術は1643例に行われ,手術死亡・病院死亡ともには3 例(0.3%)であった755) .一方,2009年の日本Pediatric Interventional Cardiology学会による全国集計では634例に対してAmplatzer Septal Occulderを用いた閉鎖術が試みられ,624例(98%)で成功した.2例で閉鎖栓の脱落に対する外科的な回収を要したが死亡例はなかった754) . 合併心疾患や肺高血圧がない心房中隔欠損の予後は,年齢に依存すると考えられている.閉鎖時の年齢が25歳未満とこれ以上では生命予後に有意差があり,また15歳未満で閉鎖した場合には予後は良好と報告されている(レベルC)760)-762) . 術後平均15年(10~ 22年)での生存率は100%,主要な事故(死亡,脳卒中,有症状の不整脈,心手術,心不全)回避率は96%で,症状のある上室不整脈を6%に認めた.術後平均26年(21~ 33年)では,非心臓死を除く生存率は99%,事故回避率は91%で上室不整脈は2%増加した. 不整脈に対する内科治療やペースメーカ植込み術が必要となることはあるが,心不全を呈することは極めて稀とされる.これらの事項に関し,二次孔型と静脈洞型に は有意差はないとされている761) . 遠隔期には1~数年に一回の胸部X線,心電図,心エコーによる経過観察が望ましい.また不整脈を認める場合には,ホルターや運動負荷心電図を検討すべきであ る760),763) . 部分肺静脈還流異常を合併した静脈洞型心房中隔欠損の術後には,肺静脈狭窄や上大静脈症候群の合併のため,外科治療やカテーテル治療の適応となることがある.これらについては,CT,MRI による経過観察を検討する764) . 経カテーテル閉鎖術後の中期予後はおおむね良好と考えられるが765) ,遠隔期における心浸食(心房壁の穿孔)の報告もあり,年に1 回の経過観察を検討する766),767) .
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン (2012年改訂版) Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)