1968~ 1980年に外科治療が行われた手術時年齢の中央値4 歳(0~ 13歳)の心室中隔欠損(VSD)176例を対象とし,109例が中央値15年(11-23年),95例が中央値26年(22~ 34年)経過したRoos-Hesselink JWらの報告768) では,19例は術後早期死亡,23例は15年経過前に死亡,6例は後期死亡(うち4 例は肺高血圧を合併,1例は大動脈弁に対する再手術で死亡,1例は非心臓死)であった.また,早期生存例のうち25年の事故回避率は80%で,事故として再手術6例(遺残VSD2 例,大動脈弁下狭窄1例,右室流出路狭窄3例),ペースメーカ植込み術6例(外科的房室ブロック2例,洞機能不全4例),電気的焼灼術1例であった.NYHA機能分類はNYHAⅠが92%,Ⅱが8%で5%は内服治療を受けていた.心室不整脈を8%に,洞機能不全の兆候を9%に認めた.遠隔期の大動脈弁閉鎖不全は15例(16%)であり,10年間で2例が軽度から中等度に進行した.遠隔死亡の危険因子は,肺高血圧の残存であった. 近年では術後早期死亡は著明に改善しており,2003年の胸部外科学会による集計では,人工心肺を用いた閉鎖術は1,669例に行われ,手術死亡は8例(0.5%),病院死は9 例(0.5%)であった.また,人工心肺を用いない姑息手術は88例に行われ,手術死亡,病院死とも3例(3.4%)であった.死亡例は全てが新生児期・乳児 期の手術例であり,比較的高い死亡率は姑息手術を行わざるを得なかった患者背景を反映した可能性がある755) . 遺残短絡,残存病変,肺高血圧が認められなくても,遠隔期には1~ 3年に1回程度の経過観察を検討すべきである.追加治療が必要となることは稀であるが,不整 脈の出現には十分注意が必要である763) . 遺残短絡に対する外科治療の適応は,未手術例に準じて検討すべきである(クラスⅠ,レベルC). 肺高血圧の残存は重大な予後不良因子であり,十分な注意が必要である.追加外科治療で改善の可能性があれば修復する(クラスⅡb,レベルC).在宅酸素療法,プロスタサイクリン,エンドセリン受容体拮抗薬などの内科治療が,遠隔予後を改善し得るかどうかに関してはまだ明らかではない. 大動脈弁逸脱を伴う例では,大動脈弁閉鎖不全進行の可能性があり,注意深い経過観察がすすめられる769)-771) .大動脈弁閉鎖不全に対する外科治療の適応は,心室中隔欠損の非合併例を参考にする.
3 心室中隔欠損
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン (2012年改訂版) Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)