2 先天性心疾患患者の運動能力
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 心室中隔欠損あるいは心房中隔欠損などの単純なCHD術後患者の運動能は,健常者と差がないとの報告が多い.しかし,ファロー四徴,単心室等の複雑CHD
術後患者では運動能は低下している63),239).低下の程度は遺残病変あるいは病態に関連し,疾患に特有ではない.一般的には,健常者と比較して%表示した場合,単純CHD術後患者では80~ 100%,ファロー四徴で70~ 90%,Fontan術後で50~70%程度である.運動能の評価は,トレッドミルやエルゴメータを用い,呼気ガス分析を併用した心肺運動負荷試験で運動時間と最高酸素摂取量(Peak VO2)を測定することができれば理想的である.エルゴメータでは多少の技量を必要とし,ある一定の身長(約120cm以上)が必要である.しかし,費用や人員の理由から容易に運動負荷試験が施行できない場合も多い.このようなときには,比較的重症度の高い患者において6分間歩行テストが有用である場合がある240),241).あるいは,日常生活の活動度(Specific Activity Scale; SASスコア)から推定し,半定量的に評価することも可能である242).Peak VO2は基礎代謝の相違から,小児では体重当たりの酸素摂取量が高く,成長に伴い低下するのが一般的であるが,男子では高校から大学生付近で,Peak VO2は約45± 5(mL/kg/分)を示し,女子では中学から高校生付近で運動能が最も高く,Peak VO2は約40±5(mL/kg/分)を示す.健常小児では運動負荷試験は5,6歳から施行可能であり,小学校入学時期とおおよそ一致することから,就学時の生活指導,管理に有用な情報と成り得る.運動能にはいわゆる体力としての有酸素運動能と比較的体力を必要としない運動技量がある.日常生活では体力に加えて運動技量も重要であるが243),現時点では,その客観的な評価法は普及していない.
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先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)