左室+dp/dt左室
拡張期流入↑

左室駆出率
心拍出量
僧帽弁
逆流↓
右室
心拍出量↑
CRT
等容性収縮時間↓
拡張期流入時間↑
左室収縮末期容量↓ 左室拡張末期容量↓
reverse remodeling
左房圧↓
両心室の
dyssynchrony 改善
左室収縮の
Dyssynchrony 改善
1.CRT
 適応: 薬物療法が有効でない重症心不全で,QRS幅120ms
以上,左室駆出率35%以下,左室拡張末期径55mm
以上の症例
2.補助循環
 a)適応: 心臓移植が適応と考えられる症例や急速に心不
全が増悪し,補助循環を行うことにより状態の
改善が期待できる症例
 b)補助循環装置
   EECP(Enhanced External Counterpulsation),IABP
(Intra-aortic Balloon Pumping),PCPS(Percutaneous
Cardiopulmonary Support),体外設置型補助人工心臓,
体内設置型補助人工心臓
3.手術療法
 a)冠血行再建術:冠動脈バイパス術
 b) 左室リモデリング手術:Dor 術90),Batista術89),僧帽
弁形成術
6 侵襲的治療
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 慢性心不全で薬物治療が無効な場合,再手術が検討される.術後の遺残症や続発症は原疾患によって異なるので,再手術々式も様々である.補助循環や左室部分切除術などの手術療法も用いられる89),90)(表3).また,我が国においても2004年以降,重症心不全に対して心室再同期療法(CRT:Cardiac Resynchronization Therapy)が実施されている.心臓移植は最も確実な治療手段であり,2010年7月の改正臓器移植法の施行により,法律上も15歳未満の小児からの臓器提供が可能となった91).しかし,将来の提供数がどのようになるかは予測できない.

①心不全と伝導障害

 慢性心不全患者では,しばしばQRS幅の拡大を認め,重症例では30~ 50%の例で何らかの心室内伝導障害を有している.心室内伝道障害は慢性心不全の予後規定因子のひとつであり,QRS幅の拡大と患者の予後は相関する.左脚ブロックのような左室の伝道障害が存在すると左室壁の収縮は一度に開始されず左室自由壁は遅れて収縮(左室内同期不全:dyssynchrony)し,壁運動は非協調的となり,収縮期血圧,心拍出量,+ dP/dtは低下する.左室両乳頭筋のdyssynchronyは僧帽弁閉鎖不全を招き,QRS幅が広いほど僧帽弁逆流時間は延長する.心室収縮の終了は遅延し,左室拡張の開始は遅れ拡張期流入時間は短縮し有効な左室流入が得られなくなる.左室伝導障害が存在すると,遅れて興奮する左室心筋は高い壁応力の存在下で収縮を開始しなければならず,外的仕事量は著しく増加する.

②心室再同期療法(CRT)

 心室内伝導障害に伴うventricular dyssynchronyに対し,心室を複数個所から同時ペーシングすれば,収縮の同期性が高まり,血行動態の改善が得られることから生まれたCRTは,1990年代後半に臨床応用され,2004年に我が国でも保険認可された.CRTの継続は,心室内伝導障害を有する重症心不全患者の自覚症状,心不全入院頻度,血行動態,運動耐容能,QOL,心エコー所見の有意な改善をもたらすことが明らかにされ,メタ解析では生命予後も次々に改善することが示されている.両心室ペーシングの継続は,心室内伝導障害を有する重症心不全患者のNYHA分類,運動耐容能,QOL,心不全入院率,左室駆出率を有意に改善させることが実証された92).さらに,本治療の継続が左室容量を減少させる93).また,僧帽弁逆流を有意に減少させる94).さらに,心筋のストレイン,心筋代謝,冠血流予備能の左室内不均一を改善し,心筋エネルギー効率を向上させる.さらに,本治療は,心不全死ばかりでなく総死亡率をも有意に減少させる(レベルB)95),96)(図2)

 成人の適応については,2008年に改訂されたACC/AHA/HRSの調律異常に対するデバイスに基づく治療ガイドラインでは,薬物治療によってもNYHAⅢ度また
はⅣ度から改善しない重症心不全で,QRS幅が120msec以上の心室内伝導障害を有し,左室駆出率35%以下で洞調律を示す例が適応とされている(クラスⅠ)97).ただし,大体3割程度に無効例があるとされ98),CRT実施前に有効例の予測ができないか種々検討されているが,確定的な予測方法はない.先天性心疾患においても,治療経験が報告されるようになり,施行数は少ないが,有用性が指摘されるようになっている99)-102).しかし,先天性心疾患では,アクセスルートが困難な場合や体心室が右室不全の場合で右脚ブロックをとる場合などがあり,未だ,確立した方法ではない(レベルC)100),103)-111)
表3 慢性心不全の非薬物療法
図2 両心室ペーシングの作用機序(文献96より引用)
Ⅰ 総論 > 3 心不全 > 6 侵襲的治療
 
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)