5 急性増悪時の治療
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 治療の基本は,低下した心臓ポンプ機能の刺激と亢進した血管トーヌスの適正化により危急的循環を立て直すことである.心不全治療の基本は安静と体温管理である.重症度に応じて睡眠導入薬(鎮静薬),塩酸モルフィン,塩酸クロルプロマジン(末梢血管拡張作用も有する)などによる安静・鎮静,経管・経静脈栄養および人工呼吸管理を行い,酸素需要低下に努める.また,体温の適正化は心臓の仕事量を軽減し,組織代謝性アシドーシスを改善する.酸素投与も有効である(レベルB)55).血管内体液量減少に利尿薬を,心収縮性低下と低血圧の改善にカテコラミンを用いる.ドパミンは血圧上昇作用が,ドブタミンは左心への充満圧低下作用が強く,併用効果も期待できる.イソプロテレノールは徐脈例に投与することがあり,エピネフリンは著明な血圧低下を伴うショック時に使用する.心不全時には心筋β受容体の感受性が低下し末梢血管抵抗が上昇しているため,最近はカテコラミンにかわりβ受容体を介さず細胞内サイクリックAMP濃度を上昇させ,強心作用と末梢血管拡張作用を発揮するホスホジエステラーゼⅢ(PDE)阻害薬(アムリノン,ミルリノン,塩酸オルプリノン)またはアデニル酸シクラーゼ賦活薬(塩酸コルホルシンダロパート)が用いられる機会も増加している.さらに,前負荷/後負荷軽減にNO供与体である硝酸・亜硝酸薬(ニトログリセリンなど)が選択される.これは末梢循環不全の一因である血管内皮のNO産生低下を補う治療とも解釈できる.カテコラミンなどの経静脈的強心薬からの離脱時に経口強心薬(デノパミン,ドカルパミン,ピモベンダン)が有効なことがある(レベルC).
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先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)