心筋障害
前負荷・後負荷増大
ジギタリス
β遮断薬
ACE阻害薬
スピロノラクトン
慢性心不全時の病態と神経体液性因子
〈降圧系〉
ANP, BNP分泌(亢進)
血管内皮,NO産生(低下)  〈昇圧系〉
圧受容器機能(低下)
交感神経  (亢進)
レニン・アンジオテンシン・
アルドステロン系(亢進)
エンドセリン分泌(亢進)
慢性心不全治療薬
心血管系リモデリング
(心筋肥大・繊維化
血管平滑筋増殖)
血管内皮機能障害
血管収縮
体液貯留
刺激作用:
抑制作用
アンジオテンシン
AT1受容体拮抗薬
 心不全は,従来から“心臓機能障害により静脈圧上昇と心拍出量低下を来たし身体各組織の酸素需要に見合う血流が保持できない状態で,運動能低下,不整脈頻発,生存率低下を招来する症候群であり,乳幼児期では体重増加不良を招来する”と定義されている56),57).慢性心不全では,労作(運動)制限,労作(体動)時息切れ,浮腫,不整脈などの症状,心室収縮・拡張機能異常,神経内分泌系の活性化(交感神経系,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系,サイトカイン,ナトリウム利尿ペプチドの上昇など)などの共通所見が認められる54),55).最近,先天性心疾患でも同様の症候,検査結果が認められ,心不全の病態が存在することがわかってきており,多くの報告がみられている58)-74).しかし,先天性心疾患は,疾患の種類,循環動態が多彩で,弁狭窄閉鎖不全,左右シャント,体循環右室,心室低形成,内因性心筋異常など,心不全の原因は様々である.また,右室機能不全を認めることが多く75),76),カテーテル治療,再手術が有効であることが少なくない(レベルC).

 心不全では種々の代償機構が働き心拍出量の低下は軽減され,血管内体液総量が増加する.代償機構として心臓自体のFrank - Starling機構,心血管系に作動する種々の神経体液性因子などが複雑に関与する.昇圧系因子(交感神経系,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系,エンドセリンなど)と降圧系因子(ナトリウム利尿ペプチド系,一酸化窒素(NO)など)が血圧と体液維持に重要な働きをする.心不全ではノルエピネフリン,アンジオテンシンⅡ,エンドセリンⅠなどの産生が亢進し,各々β受容体,アンジオテンシン受容体,エンドセリン受容体を活性化する.その結果,心筋と血管平滑筋細胞内のカルシウム濃度が上昇し,心収縮力の増強
と血管トーヌス亢進がおこる.これらは局所因子としても作用し細胞増殖・分化を促進する酵素を活性化するため,心筋肥大・線維化および血管平滑筋増殖(心血管リモデリング)が促進される.降圧因子であるナトリウム利尿ペプチドの産生も亢進する.血管内皮の一酸化窒素産生は低下し,これによる血管拡張能低下と前述の昇圧系因子産生亢進は末梢循環不全の一因となる.慢性心不全では,これらの昇圧系因子の作用を抑制することが治療の基本となる(クラスⅡb,レベルB)(図1)55)
2 心不全の病態
図1 慢性心不全時の主な神経体液性因子と治療薬の関係
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先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)