2 パッチの耐久性

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 先天性心疾患修復術において,欠損孔や狭窄部を修復する際に,パッチは必要不可欠なものである.パッチは,使用する場所やそのハンドリングのよさなどにより様々な素材が用いられ,例えば自己心膜(新鮮,もしくはglutaraldehyde 処理),Dacron,Hemashild,expanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)などが使用される.いずれの素材も基本的には成長は望めないため,近隣の自己組織の成長などによって再手術が回避されることを期待し再建が行われる.

 いっぽう,心室中隔欠損閉鎖に自己心膜を使用した場合,新鮮自己心膜,glutaraldehyde処理自己心膜にかかわらず瘤形成することが報告されており23),24)自己心膜のみで圧負荷がかかる場所にパッチをあてることは検討を要する.したがって,修復する場所や,圧を考慮しパッチを選択する必要があると考えられ,高い圧負荷がかかる場所ではDacronやHemashieldパッチなどの人工材料が用いられることが多い.しかし,術後急性期ではパッチはむき出しであり,血流ジェットがパッチにあたることにより溶血することがあり,自己心膜を他の人工材料で裏打ちすることで補強し用いることもある(レベルB)25)

 他の重要な遠隔期問題点として,パッチの変性,石灰化がある.異種心膜を材料としたパッチは石灰化し,狭窄などを起こす.したがって,ファロー四徴などの右室
流出路再建にはePTFEがその素材として用いられるようになり,monocuspなどにも応用され26),その形状も近年工夫されておりその短期成績も良好であるとされる
(レベルC)27),28).また,肺動脈形成にパッチを用いる場合にはパッチのハンドリングのよさだけでなく,その素材の遠隔期の特性に注意を要する.

 パッチ素材は成長しないことや石灰化などの素材の変性が問題点としてあげられる.これら問題点を解決すべく,例えば,自己組織再生素材を応用したbiodegradable graft materialによるパッチ作成など,さまざまな試みが行われている29),30)
Ⅰ 総論 > 2 人工材料の耐久性 > 2 パッチ
 
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)