5 再侵襲的治療
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 PA/VSD などに対する乳幼児期の心外導管を用いた右室流出路再建術は,小児患者の成長に伴う相対的狭小化と石灰硬化を伴う導管狭窄が生じる.特に弁付き心外導管は,作成した弁が半閉鎖位で固定し,その部が最狭部となることが多い669)-673).ブタ・ウマ・ウシなどの異種心膜を用いて再建された弁付き導管の10年再手術回避率は60~ 70%であり,16mm以下の小口径導管及び低年齢手術後は,石灰硬化を生じ導管狭窄を来たしやすい.これに対し,ePTFEを用いた右室流出路再建例では,硬化を来たすものの5年再手術回避率は100 % である666),674)-676).また同種肺・大動脈弁はRoss 術例では遠隔成績は良好であるが,Ross 術以外での遠隔期における弁機能は不良であり,若年者・小口径ほど石灰硬化を来たしやすいとされる13),677)-680)

 心外導管狭窄が進行した場合,右室後負荷により右室肥大を生じ,右室流出路狭窄が進行し,重篤な心室不整脈を生じて致命的となる可能性があるため125),圧較差が高度の右室流出路狭窄の症例は,再手術またはカテーテル治療が推奨される(クラスⅡa,レベルB)137),382),454),681)

 カテーテル治療の第一選択の手技はバルーン肺動脈形成術であり,効果がなければステントを使用した拡大術を行うが,全周性の石灰硬化を来たした症例は一般にカテーテル治療は困難と考えられるため,再手術が推奨される(クラスⅡ a,レベルC)387),389),395).国外においては,心外導管を用いた手術で遠隔期に狭窄がなく閉鎖不全が治療の対象となる場合は,経カテーテル肺動脈弁置換術の適応となることもあるが682),その遠隔成績はいまだ不明である.

 再手術では,除去された導管周囲の癒着組織を利用した右室流出路再建683),または心外導管置換術を施行する684)-686).導管置換術の成功率は高い17),687).しかし異種心膜を用いた再手術の際には,異種心膜が高度に硬化・石灰化していれば胸骨と高度の癒着を来たしていることもあり,剥離の際に容易に破綻し大出血を生ずる危険があるため注意を要する.

 また,右室流出路再建と同時に心室内リルーティングを行った症例で,同部位の変性・狭窄の進行(左室流出路狭窄)が生じれば,再手術またはカテーテル治療適応を検討する(レベルC).

Ⅱ 各論 > 9 心外導管を用いた手術 > 5 再侵襲的治療
 
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)