Ⅰ:上心臓型(supracardiac type) 左右肺静脈が合流して共通肺静脈(common pulmonary vein)を形成し,さらに共通肺静脈から起始する垂直静脈 (vertical vein)を介して肺静脈血は左無名静脈(ⅠIa),ま たは右上大静脈・心房接合部(Ⅰb)へ還流する. Ⅱ:心臓型(cardiac type) 左右肺静脈が冠状静脈洞(Ⅱa)または右房(Ⅱb)へ還 流する. Ⅲ:下心臓型(infracardiac type) 垂直静脈が横隔膜を貫いて門脈,静脈管,肝静脈,下大静 脈などに還流する. Ⅳ:混合型(mixed type) 左右肺静脈が上記の二種類以上の異なる部位に還流する. Ⅱa+Ⅰaが多い.
2 解剖学的特徴
TAPVCは,すべての肺静脈が体静脈系あるいは右房に還流する疾患である.病型分類は肺静脈の還流部位によって分類するDarling分類598) が一般的に用いられる(表17) .Ⅰ型(supracardiac type),Ⅱ型(cardiac type),Ⅲ型(infracardiac type),Ⅳ型(mixed type)が各々約45%,25%,25%,5%を占める.TAPVCは近年心エコー検査のみで診断される割合が増加し,手術成績向上の一因となっている599) .術前PVOはⅢ型でほぼ全例,Ⅰ型の約半数に合併するがⅡ型では稀である599) .他の心疾患にTPAVCを合併するcomplex TAPVCは,無脾・多脾症に多く見られ600),601) ,特に無脾症では80%近くにTPAVCを合併する。無脾・多脾症以外では極めて稀である.
表17 Darling分類598)
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン (2012年改訂版) Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)