Class Level
完全型房室中隔欠損
・アイゼンメンジャー症候群を伴う場合には,手術は禁忌である.高肺血管抵抗
を疑う場合には,PVRの計測が推奨される.
・再手術の適応についてはESC guideline: VSD: Section 4.2も参照すること。
Ⅲ C
不完全型房室中隔欠損
・右室容量負荷が著明である場合には,手術による欠損孔閉鎖が必要である.
・詳細についてはESC guideline: ASD: Section 4.1を参照すること. Ⅰ C
房室弁閉鎖不全
房室弁逆流量がmodearateあるいはsevereであり,房室弁逆流に起因する症状を
認める場合,房室弁に対する手術が必要である.その場合,可能であれば房室弁
形成術を選択する.
Ⅰ C
左側房室弁逆流量がmodearateあるいはsevereであるが,弁逆流に起因する症状
を認めない場合,左室拡張末期径(LVESD)>45mm,左室機能低下(LVEF <
60%)の両方,あるいはいずれか一方を認めるならば,他に左室機能低下の原因
がないことを確認の上,房室弁に対する手術が必要である.
Ⅰ B
左側房室弁逆流量がmodearateあるいはsevereであり,左室容量負荷を認める場
合,房室弁形成術が可能であると判断されれば,手術を考慮する必要がある. Ⅱa C
大動脈弁下狭窄
ESC guideline: Section 4.5.3を参照すること. -
Class Ⅰ
1. 先天性心疾患に対する手術において,十分な研修を受け,
習熟している者が房室中隔欠損に対する手術を行うべき
である(Level of Evidence: C).
2. 以下の適応条件を認める場合,房室中隔欠損に対し心内
修復術を既に受けている成人において再手術を推奨する:
  a. 左側房室弁閉鎖不全または狭窄により有意な症状を
認める,心房あるいは心室不整脈が出現する,左室
径の拡大が進行する,あるいは左室機能が継続して
悪化する場合,左側房室弁形成術あるいは,左側房
室弁置換術が推奨される(Level of Evidence: B).
  b. 左室流出路の平均圧較差>50mmHg,最大圧較差>
70mmHg,あるいは平均圧較差<50mHgであっても
左側房室弁閉鎖不全,あるいは大動脈弁閉鎖不全を著
明に認める場合(Level of Evidence: B).
  c. ASDあるいはVSDが再発,または遺残し著明な左右
シャントを認める場合.なお,ACC/AHA 2008
    Guidelines for Adults With Congenital Heart Disease の
Section 2: ASD, Section 3: VSDも参照のこと.(Level of
Evidence: B)
5 術後の再侵襲的治療
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 心内修復術後,再手術を要する病態は主に左側房室弁閉鎖不全,左側流出路狭窄である.また,左側房室弁狭窄,遺残短絡,右側房室弁閉鎖不全が手術適応になることもある.

 最近の報告では房室中隔欠損における再手術介入理由において最も多いものは左側房室弁閉鎖不全(67~ 82%)であり,続いて左側流出路狭窄(10~ 25%)であった.また,左側房室弁狭窄が再手術の理由になる症例を認めた(1%)530),531)

①左側房室弁閉鎖不全と狭窄

 外科治療を要する遠隔期合併症のなかで,最も頻度が高いのが左側房室弁閉鎖不全である(4~19%)532)-537).近年では心内修復の際に左側房室弁の裂隙を閉鎖するのが一般的であるが534),特に術前から中等度以上の逆流を来たす症例において遠隔期に左側房室弁逆流が重症化し再手術を行う場合がある538).また手術直後から中等度以上の逆流を認める症例があり,これらの症例では比較的近接期に再手術を必要とすることがある532)

 左側房室弁閉鎖不全に対する手術時期は,成人期であれば後天性心疾患における僧帽弁閉鎖不全の手術適応時期を参考にする(クラスⅡ a,レベルC).小児期の手術時期に関しては明確な基準はない.Krishnanらは,成人以上に左心室機能の回復は良好であると報告している539)

 手術方法には,弁形成と弁置換の2種類がある.体の成長に伴いpatient-prosthesis mismatchを生じることが危惧される学童期までの症例,あるいは出産を希望する女性においては,可能な限り弁置換術までのpalliationとして弁形成が試みられる.形成方法として裂隙の追加縫合のみで改善が得られる場合もあるが,弁輪縫縮,人工腱索や補填物による短縮した弁尖の延長などを必要とする症例もある540)-543).しかし,後天性心疾患における僧帽弁閉鎖不全と異なり,生来異常な形態である左側房室弁形成の成績は不良である538)

 弁置換術では,その耐容性を考慮して通常機械弁を用いることが多い(クラスⅡ a,レベルC).Guntherらは,抗凝固療法に関連した合併症は10年で7.4%と決して高率ではないと報告している545).しかしErezらは,特に房室中隔欠損症に対する左側房室弁形成術を試みた症例では,後の弁置換での予後は不良であったと述べている545).また,低年齢での弁置換の手術リスクは決して低くなく544)-546),さらにpatient-prosthesis mismatchに伴う再弁置換は少なくない544)

 いっぽう,心内修復術後に,左側房室弁逆流のみならず房室弁狭窄を認めることがある530),531).有症状がある場合や,心房不整脈,心室不整脈を示す例では,僧帽弁狭窄に対する手術適応を参考にし,手術時期を決定する(クラスⅡ a,レベルC).

②左室流出路狭窄(大動脈弁下狭窄)

 房室弁のscooped outにより生じる左室apex to outflowの延長は,形態的な左室流出路狭窄を形成するが,心内修復後に進行するものを含めて,線維組織の肥厚や円錐中隔の筋性肥厚を合わせた左室流出路狭窄は5%前後に認める534).通常大動脈弁は正常であるため,外科的狭窄解除は円錐中隔部の肥厚した線維組織や心筋を切除するだけで効果的な場合もあるが,再発も多く認める547).流出路全体の狭窄を呈する場合には,中隔の切開と同部へのパッチ補填(modified Konno procedure)(クラスⅡa,レベルC)548),549)や,心尖―大動脈導管術550)が適応となる550),551)

 なお, 再手術適応に関してはACC/AHA 2008 Guidelines for Adults With Congenital Heart Disease(表15)335) と,ESC Guidelines for the management of
grown-up congenital heart disease( new version 2010)(表16)552)を参照されたい.
表15  ACC/AHA 2008 Guidelines for Adults With Congenital Heart Disease335)
表16 ESC Guidelines for the management of grown-up congenital heart disease552)
Ⅱ 各論 > 5 房室中隔欠損 > 5 術後の再侵襲的治療
 
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)