・初回手術月齢 <6か月
 ・予測弁輪径 <16mm
 ・弁内径 <14mm
 ・弁内径指数 >50mm/m2
  (=弁内径/体表面積)
 ・有効弁口面積 <2.5cm2
 ・有効弁口面積指数 >7cm2/m2
  (=有効弁口面積/体表面積)
 ・人工弁径/体表面積 >69mm/m2
1.心不全 NYHA Ⅲ~IV
内科治療に抵抗性の心不全905),911)
運動耐容能の低下などの進行性の症状898)
体重増加不良905)
肺うっ血に伴う易感染性906)
2.肺高血圧 中等度(平均で35~45mmHg)以上の肺高血
圧898),905),911)
3.心機能 左室容積の進行性拡大898)
収縮末期径の拡大906)
高度の僧帽弁逆流および心収縮能が60%以下
の場合912)
僧帽弁流入速度の平均圧格差が10mmHg以上
の場合912)
4.その他 心エコー検査の結果で治療できる形態913)
逆流の程度が進行性906),913)
①形成術後

 再手術に関して,先天性のMSのみの報告は少ない.

 形成術後は5 年間で約1/3が弁置換となる905).弁上部狭窄の場合には,再手術なく経過しうる909).合併心疾患のない僧帽弁狭窄であれば形成術の予後は良好で,15年生存率は93%である905).初回治療後の狭窄ならびに閉鎖不全に関する再手術回避率は45~ 86%で898),再手術の頻度は高い.約半数以上で再形成術が行われるが,初回手術より弁置換術の比率は高い910),911)

 小児期の僧帽弁疾患は発生頻度が低いことから,再手術に関する治療適応や基準に関しては,十分検討されているとはいえず,手術適応に関する基準は明確でない.MS,MRを問わず僧帽弁疾患であれば,初回の手術適応として心不全,肺高血圧ならびに心機能低下が挙げられている.これは,成人僧帽弁疾患の再手術の適応と同様である.以下に初回手術の適応を記載し,先天性僧帽弁疾患の再手術を検討する際の参考資料とした(クラスⅡ a,レベルC)(表20)

②弁置換術後

 人工弁置換術に伴う合併症としては,弁の機能障害(構造的弁劣化,非構造的弁劣化),弁周囲からの逆流,心内膜炎がある.この他,血栓塞栓症,重度の血管内溶血,抗凝固療法に伴う繰り返す出血と血栓弁などが挙げられる46).抗凝固療法や感染性心内膜炎の予防がガイドラインに示されている46),900)

 合併心疾患のない僧帽弁疾患に対する,弁置換術後の予後についての報告はほとんどない.房室中隔欠損や両大血管右室起始を合併する僧帽弁置換術では再手術率が27%~42%(7~ 10年)914)-916),全事象(手術死亡,再手術ならびに出血など)回避率が55%(10年)914)である.合併心疾患のない僧帽房弁疾患のほうが生存率はよい916).また,弁置換術後の合併症として左室流出路狭窄,完全房室ブロックがあげられる917),918)

 小児期では成長により人工弁が相対的に小さくなるという問題がある.弁置換術における再手術予測については,初回手術月齢,予測弁輪径,人工弁内径,人工弁弁口面積,人工弁の径とその体表面積補正値などが参考になる(表21)915).体表面積補正値が60%以下になると症状が出現するといわれる915)

 乳幼児期に施行した人工弁置換術後の再手術時期予測に関して,以下の事実が参考になる.

A: 人工弁置換術後8.5年の経過で体重が2.5倍になると,肺高血圧や心肥大が遷延する919)
B: 成長に伴う相対的狭窄による再手術時期は,初回手術後平均8年である(再手術率:29%)915)
C: エコーでの弁通過流速は5 年で平均1.5m/s,10年で2.2m/sと徐々に増加する.再弁置換術例の弁通過血流速度は2.6~ 3.2m/sである916)
5 術後の侵襲的治療
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表20 先天僧帽弁疾患の手術適応(クラスⅡ a,レベルC)
表21 僧帽弁置換手術後の再手術のリスク因子915)
Ⅱ 各論 > 15 僧帽弁狭窄・僧帽弁閉鎖不全 > 5 術後の侵襲的治療
 
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)