6 遠隔期の侵襲的治療
次へ
①頻拍性不整脈の治療

 エプスタイン病に合併するWPW症候群,房室結節回帰頻拍,心房粗細動,心室頻拍は術前からみられることが多く,術後の病状悪化や突然死にも関連するため,術前にアブレーションを行うか,手術時に副伝導路の切断や右房maze術を併用することが多い885),890)-892).そのため術後不整脈に対するまとまった報告はみられないが,術前同様に積極的に適応を検討する(クラスⅡ a,レベルC).副伝導路に対するアブレーションは,右房拡大や三尖弁下方偏位により固定が困難であることや複数副伝導路が多いことから,器質的心疾患を有さない症例の副伝導路のアブレーションより成績は劣るが,約70- 80%と良好な成功率である893),894).弁置換術後は,弁輪部付近へのアブレーションは困難なことが多い.また再手術例は,術中のアブレーションや右房 maze 術の併用も考慮する(クラスⅡa,レベルC)894)

②ペースメーカ

 心内修復術後の房室ブロック,洞機能不全が適応となる.三尖弁置換術後で右室へのリード挿入が困難な症例では,心室再同期療法で行われるのと同様に,冠静脈からリードを挿入し左室をペーシングする方法も報告されている895)

③外科手術

 術後遠隔期に施行された再手術に関する報告は少ないが,三尖弁形成術では10年で23%施行され,三尖弁閉鎖不全の進行に対する手術に限れば10年で20%であり,そのほとんどが三尖弁置換術である.生体弁による三尖弁置換術でも,置換弁機能不全のため10年で約20%の三尖弁の再置換が行われている886).進行する三尖弁閉鎖不全に関して,右室の容量負荷による右室収縮能の低下に注意が必要である.
Ⅱ 各論 > 14 エプスタイン病(三尖弁閉鎖不全) > 6 遠隔期の侵襲的治療
 
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)