対象抗菌薬投与法 経口投与可能アモキシシリン50mg/kg( 上限2g) 処置1時間前経口 経口投与不可アンピシリン50mg/kg(上限2g) 処置30分以内に静注 ペニシリンアレルギーがある場合1.クリンダマイシン20mg/kg(上限600mg) 処置1時間前に経口 2.セファレキシン あるいは セファドロキシル 50mg/kg(上限2g) 処置1時間前に経口 3.アジスロマイシン あるいは クラリスロマイシン 15mg/kg(上限500mg) 処置1時間前に経口 ペニシリンアレルギーがあり,経口投与 不可 1.クリンダマイシン20mg/kg(上限600mg) 処置30分以内に静注 2.セファゾリン 3.セフトリアキソン 50mg/kg(上限1g) 処置30分以内に静注
1.高度リスク群 人工弁術後 細菌性心内膜炎の既往 複雑チアノーゼ型先天性心疾患(未手術/人工材料を使っ た修復術後) 体肺動脈短絡術後 人工材料を使用した心房中隔欠損,心室中隔欠損の修復術 後やデバイス閉鎖後6か月以内 2.中等度リスク群 ハイリスク群を除くほとんどの先天性心疾患 弁機能不全 肥大型心筋症 弁逆流を伴う僧帽弁逸脱 3.感染の危険性が特に高くない例(一般の人と同等の危険率) 単独の二次孔型心房中隔欠損 心房中隔欠損,心室中隔欠損もしくは動脈管開存の術後(術 後6か月を経過し続発症を認めない例) 冠動脈バイパス術後 逆流を合併しない僧帽弁逸脱 無害性心雑音 弁機能不全を伴わない川崎病既往例 弁機能不全を伴わないリウマチ熱既往例
7 感染性心内膜炎
先天性心疾患における感染性心内膜炎の発症は多く216)-218) ,罹病率,死亡率ともに高い219) .チアノーゼ型先天性心疾患の修復術後にも多い.先天性心疾患にみられる感染性心内膜炎の特徴は,①歯科処置,再手術に起因することが多い219)-221) .②遺残病変,続発病変への感染の頻度が高い,③人工血管,人工弁など人工材料感染が多い,④人工材料感染は,エコー診断が難しい,⑤経食道エコー法が有用なことが多い,⑥小児よりも成人に多い(レベルC)219),200) .基礎心疾患別リスク(表9) 単純先天性心疾患の修復術後は,感染リスクは著明に軽減する(レベルC)219),220) .心外導管,人工弁,生体弁など人工材料を用いる複雑先天性心疾患の手術は,修復術後もリスクが高い(レベルC)220) .日本の多施設研究219) では,心内膜炎全体で手術後が55%(修復術後:63% , 姑息術後:37%),このうちチアノーゼ型心疾患は75%を占め,姑息術後に高頻度に認められる.
表9 基礎疾患別リスク
診断と症状,管理 Duke(modified) Criteria 222) は先天性心疾患にも有用である(レベルC).合併症は,弁逆流悪化,心不全,弁輪部膿瘍,人工弁機能不全,全身塞栓,脳塞栓,不整脈,膿瘍形成,細菌性動脈瘤で,約50%に認める(レベルC)219) . 心不全は大動脈弁感染に多い(レベルC)223) .僧帽弁,大動脈弁心内膜炎のほか,黄色ブドウ球菌,真菌感染は,塞栓頻度が高い223),224) .塞栓形成のリスクは,直径1cm以上の僧帽弁疣腫,疣腫サイズの増大である219),223),224) .僧帽弁心内膜炎は塞栓発生率が高い223) .先天性心疾患は右心系の感染が多い(レベルC).人工弁置換術後感染は,全身性塞栓症状を認めることが少なくない223) .弁周囲感染は新たに発生したかあるいは以前とは異なった心雑音,左脚ブロック,完全房室ブロック出現時に疑われる.心エコー法 :塞栓のリスク,手術適応の決定に有用である216),225) .人工弁感染,弁輪部膿瘍の合併は経胸壁エコー法での確定診断は難しく225),226) ,経食道エコー法が有用である(レベルC).複雑先天性心疾患術後の,人工材料感染は,的確に診断できない場合が多い(レベルC)223),227) .治療 外科治療を要することが多い216),224) .1)内科的治療法 :推奨される抗菌薬とその使用法は,循環器病の治療と診断に関するガイドライン「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂 版) 」216) と日本小児循環器学会「小児心疾患と成人先天性心疾患における感染性心内膜炎の管理,治療と予防ガイドライン」228) を参照のこと.2)外科的治療法 :外科療法の適応は,心不全増強,感染コントロール不十分,塞栓,真菌感染,人工弁感染,進行性病変(弁輪周囲膿瘍,心筋膿瘍,伝導系異常),人工材料感染である( クラスⅡa,レベルC)216),224),225) .急性期でも,血行動態が悪化すれば,外科治療を行うことが推奨される(クラスⅡ a)216),227) .感染人工材料の交換が必要となることも多い223),227) .予防を必要とする基礎疾患と予防投与 予防を必要とする疾患を表9 に,予防を必要とする処置に対する抗菌薬予防法を表10 に示す228) . 予防に関する患者教育は大切で,日常の口腔内,皮膚感染などのケアは重要である.
表10 歯科,口腔,呼吸器,食道の手技,処置に対する抗菌薬の標準的予防投与法228)
(注1) 単独の二次孔型心房中隔欠損及び心房中隔欠損,心室中隔欠損もしくは動脈幹開存の術後(術後6か月を経過し続発症を認 めない例)は,予防内服の対象から除く. (注2)これらの投与量,投与回数は,多数例での証拠に基づいていないため,体格,体重に応じて減量可能と思われる.
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン (2012年改訂版) Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)