4 人工血管
次へ
 先天性心疾患では,患児の成長を考慮し,人工血管をそのまま用いた血管再建の頻度は少なく,一部分を切り取りパッチ状にして使用する.以前は生体材料人工血管として,glutaraldehyde処理やエポキシ処理した異種人工血管49)が用いられたが,架橋処理による石灰化変性などの劣化の問題により,最近は主に合成高分子人工材料の人工血管が用いられる.人工材料の耐久性は十分と考えられ,経年の構造劣化により人工血管が破裂したという報告は少ない(レベルB)50),51)

 また,遠隔期の問題点として,抗血栓性があげられる.人工血管内腔の血栓付着を防ぐためには,抗血栓性素材にてcoatingする,血管内を内膜化させるなどの方法があるが,人工血管内を完全に内膜化させることについては臨床応用できておらず,血栓形成,感染などのリスクを常に負っている.

 その観点から,近年,再生医学技術を応用した人工血管が研究されている.布製人工血管に生体組織の細胞を播種する方法52)や,生体分解性ポリマーに培養細胞を播種し作成する方法53)などが報告されており,後者は,ポリマーが吸収されると生体内で血管組織に似た組織が再生されるとされており,小口径人工血管や成長が期待されることから小児への応用が待たれる.
Ⅰ 総論 > 2 人工材料の耐久性 > 4 人工血管
 
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)